シス・カンパニー公演〜2本立て上演〜 父帰る/屋上の狂人
SIS company inc. のプロデュース作品のご紹介
《公演概要》
作家・菊池寛が祈りを込めて短編に綴った日本人のこころ。
草彅剛をはじめとする最強キャスト・スタッフが小空間に集い、一挙に味わう珠玉の二作品。
時代を超えて現代の私たちに問いかける、家族とは?人間の真実とは?真の幸福とは?
 この春、シアタートラムにて上演決定!


 近代戯曲の古典に数えられながら、時代を超えて私たちにリアルに問いかけてくる菊池寛が描く劇世界。
常に大衆を信じ、大衆に愛された彼の世界には、当時ようやく芽生えかけてきた近代的な個人意識と、それでも逃れられない日本的な家族の情愛の狭間で葛藤する、愛すべき市井の人々の姿が描かれています。
なかでも、今回上演する『父帰る』は約90年前、菊池寛がまだ29歳の頃に執筆され、大正九年(1920)に二代目市川猿之助(現在の猿之助丈の祖父)が歌舞伎として上演し、絶賛を博した記念すべき作品です。この成功により、菊池の筆名は一躍上がり、翌年には『屋上の狂人』を帝国劇場で初演、その人気を決定的なものとしたのです。
この大衆の絶対的な支持を背景に、以後、菊池寛は数々の戯曲や小説を精力的に著し、執筆業だけでなく文藝春秋社の創設、芥川賞・直木賞の制定、映画会社大映の運営など、近代日本の大衆文化におけるプロデューサーとしても君臨したのでした。
しかし、菊池寛が大衆に愛されたのは、敏腕ぶりを発揮したプロデュース能力によるものだけだったのでしょうか。
近年注目されたテレビドラマでの菊池寛ブームは、ともすれば“通俗”と揶揄されながらも彼が貫いた、そのセンセーショナルな作風がもたらした偶然の賜物だったのでしょうか。
いいえ、私たちシス・カンパニーは、そこには、「家族とは?」、「人間の真実とは?」、「真の幸福とは?」と、シンプルで明快、かつ力強く大衆に問いかけ訴え続けた、菊池寛の祈りと叫びが込められているからだ、と考えています。
 そこで、この度、この永遠の命題を超然とした美しさで描いた菊池寛の短編戯曲を、2作連続で上演する運びとなりました。
この2作品で、タイプの異なる日本人の姿を表現し特異な劇世界を支えるのは、現代演劇を代表する演出家と役者たちです。
 演出は、マルチライブ集団「HIGHLEG JESUS」総代として構成・脚本・演出を手がけ人気を集め、解散後、俳優として数々の話題作に出演する一方、「鈍獣」(宮藤官九郎 作)などでその演出手腕が高い評価を受けている河原雅彦が古典文芸作品演出に初挑戦します。そして、取り囲むツワモノ役者陣は、まず、蜷川幸雄演出舞台で絶賛され、成長著しい若手実力派:勝地涼、大衆剣劇から蜷川シェイクスピアまで自在に行き交い、正に大衆文化の生き字引とも言える 沢竜二、本年度紀伊國屋演劇賞個人賞を獲得した演技派:梅沢昌代 が挑み、その技を競い合います。加えて、「父帰る」には、こまつ座「父と暮せば」をはじめ舞台での地歩を着実に築いている 西尾まり、「屋上の狂人」には、劇団M.O.P.看板女優で、映像にも活躍の場を広げている キムラ緑子、鬼才・松尾スズキの「大人計画」で力を蓄えてきた若手:富川一人、そして、映像での親しみ溢れるキャラクターと舞台での骨太な存在感が共存する 高橋克実 が加わり、この小品に大きなクサビを打ち込んでいきます。
 そして、この強力キャストを牽引する主人公:父帰る=賢一郎、屋上の狂人=義太郎を演じるのが、久々の舞台出演、しかも、200席ほどの小空間での文芸作品挑戦という姿勢が、すでに驚嘆の的となっている 草彅剛 なのです。
 国民的人気グループSMAPの中でも、彼が見せる存在感は、常に演劇的な驚きに満ちています。
彼の佇まいには、静謐な中にも強靭な意志、哲学的な思惟を感じさせる翳りの中にも熱くたぎる感情を秘め、常に「何を演じてくれるのか?」という「期待感」を感じさせてくれます。その無邪気で屈託のない振る舞いや微笑は、ひと度、演技の世界に入れば、その鋭い眼光が冷徹にも、慈悲にも変容を遂げる「意外性」で衝撃を与えます。
彼のもつ演劇的な天賦の才と現代の誰もを惹きつける普遍的な魅力が、この菊池寛戯曲と出会うとき・・・・・・
それは、新たな「現代の古典劇の誕生」と、私たちは確信しています。

草彅剛 をはじめとする最強の役者陣・演出家を得て、シアタートラムの濃密な小空間に点される、生きることへの希望の
灯火、そして無垢な魂・・・。皆さんは、そこに、約90年前の大衆が涙し熱狂した懐かしき日本人の姿を発見し、またそこに、
現代の私たち自身の姿、本来あるべき姿、心の内実を見出すのかもしれません。
2006年春、ダブルビル(二本立て)で上演する珠玉の二作品に、是非ご期待ください!

"父帰る"
家族を顧みず、放蕩のあげくに女をつくって家出した父が、二十年ぶりに落ちぶれ果てた姿で 我が家に戻ってくる。
母と次男と娘は温かく迎えたが、貧困と闘いつつ一家を支え、弟妹を中学まで出した長男・賢一郎は父を許さず、自分たちにとっては親どころか敵であると、積年の恨みを叩きつける。
長男の怒りの前に、父は悄然と去る。しかし、「賢一郎!」と哀願する母の叫びに、彼は弟を連れて、狂気のように父の跡を追うのであった。
"屋上の狂人"
瀬戸内海のある島の財産家の長男・義太郎は、毎日自分の家の高い屋根に上り、一日中、穏やかな海を凝視している。彼によれば、金毘羅様の空の彼方に神殿があり、天人と天狗が舞い踊る様子が見えるのだそう。そう言っては、彼はいつも無邪気に喜んでいる。しかし、両親にとっては、世間体もあり、何とか癒そうと苦心するが効き目がない。そんなある日、義太郎の奇行は狐が憑いたせいだという巫女が現れ、両親は巫女の言う通りに、屋上の義太郎を松葉でいぶし始める。そこへ中学校から帰宅した弟の末次郎が憤慨して巫女を追い出し、両親に、兄は今のままが幸福なのだと説き、将来は自分が面倒を見ると誓い、屋根に上り、狂人の兄とともに、穏やかな瀬戸内の海を照らす夕日を眺めるのであった。
"菊池寛 略歴"
明治21年(1888)、香川県高松市出身。
貧家に生まれながら、勉学に励み、第一高等学校(現代の東京大学教養部)文学科に入学。
在学中に、芥川竜之介、久米正雄たちと運命的な出会いをする。
この友人たちと第四次「新思潮」を創刊し、戯曲「屋上の狂人」を発表。卒業後は、時事新報社に入社。戯曲「父帰る」を発表し、絶賛を浴び、「無名作家の日記」、「忠直卿行状記」を発表し、文壇での地位 を確立。「真珠夫人」等の新聞連載小説で大衆的な支持を得る。
大正12年(1923)に文藝春秋社を創設し、雑誌「文藝春秋」を創刊。
昭和10年(1935)には芥川賞、直木賞も設定し、若手作家の育成に尽力する。
また、昭和18年には、大映の社長にも就任し、実業家としても成功する。
功績としては、日本の文学界にヒューマニズム、リアリズムをもたらすとともに、作家の社会的地位の向上や、著作権の擁護にも尽力した。本上演作「父帰る」、「屋上の狂人」は出身地・四国を舞台にし、生きた方言で執筆された戯曲としても、最高傑作に数えられている。

[ お問い合わせ ]
シス・カンパニー (03)5423-5906
番号はお確かめの上、お間違えないようおかけください。


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