シス・カンパニー公演 コペンハーゲン
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本公演は、2016年7月3日(日)に無事に千秋楽の幕を下ろしました。
ご来場、誠にありがとうございました。


 第二次世界大戦下、ナチス・ドイツと連合国側が、熾烈な新兵器開発競争を展開したことは歴史上の事実として知られています。そして、その競争がどういう結末を迎えたのかも、当然、誰もがよく知るところです。 この開発競争の過程にあって、長い間、謎とされていた「ある1日」が存在します。 それは、かつて師弟として歩みながら、今は敵対する国家に分かれて生きる2人のノーベル賞受賞物理学者が、ナチス占領下のコペンハーゲンで、久々に話す機会をもった、という1941年のある日のことです。 歴史的には、この時期を境に、核開発をめぐる流れが大きく変わり、誰もが知る“結末”へと向かったことから、 あの日、そもそもドイツ陣営のハイゼンベルク博士が、なぜユダヤ系科学者でナチス監視下にあったボーア博士をわざわざ訪問し、そこで何を語り合ったのか、そして、それが後年の原子力開発にどのような影響を与えたのかに、世の関心は集まっていました。それが、当の本人たちが、多くを語らぬまま世を去ったため、真相は歴史の暗闇へ。 そんな「謎の1日」を題材に、ジャーナリスト出身の英国の劇作家マイケル・フレインが、ドラマチックな考察を加え、まるでサスペンスを見ているかのような興奮を呼び起こす戯曲として創作したのが、本作「コペンハーゲン」です。


1941年秋のある日。ドイツの物理学者ハイゼンベルク(段田安則)は、かつて師と仰ぎ、共に研究に従事した デンマーク人の物理学者ボーア(浅野和之)とその妻マルグレーテ(宮沢りえ)に会うために、デンマークの首都 コペンハーゲンを訪れた。コペンハーゲンは、ナチス・ドイツの占領下にあり、ユダヤ系であるボーアはナチスの 監視下にある。また、ナチス・ドイツ政権の下で、原爆開発チーム「ウラン・クラブ」の一員となっていたハイゼンベ ルクにも、当然、自由な行動は許されないのは明らかだ。そんな中で、わざわざボーアを訪ねたハイゼンベルク の真意とは? 連合国に通じているであろうユダヤ系のボーアの動向を探るためなのか? もしくは、ボーアをナチス側に引きこむためなのか? または、ドイツの原爆開発を自ら阻止する思惑か?  お互いの真意を探り合うような会話は、現在から、過去の出来事もフラッシュバックのように現われ、そして・・・。

 登場人物3人は、<ある時点>に立ち、そこから「あの謎の1日」を振り返り、あらゆる角度から検証しながら、まるで今起こっていることのように語り合いを深めていきます。しかし、3人がそれぞれ懸命に記憶を再現しようとしても、なかなか確かな事実には行き当たりません。彼らは、記憶や言動の不確かさをお互いに補い合うかのように、ときには、3人のうちの1人が、「なぜ?どうして?」と問いかけを挟んだり、ときには、ナレーターのように、状況を解説するかような役割も担っていきます。 そして、それぞれが、謎解きのキーパーソンになったり、あるときは共鳴板となったり、また糾弾の最先鋒に立ったりと、絶妙なタイミングとリズムで立ち位置を変えながら、その先にある“何か”に向かって突き進んでいきます。それぞれの熱量を最大限に放出しながら、彼らは個々の記憶のカケラをたぐり寄せ、あるときはリアルに再現し、また崩し、そしてまた再構築していきます。その中で、次第に自分自身の真実の姿、延いては、人間の存在の根源的な意味合いを浮かび上がらせていくのです。
  この戯曲のテーマと設定が「物理学」ですから、確かにこの芝居には、「量子力学」、「不確定性原理」、「相補性 原理」等々の多くの学術用語や科学、国家、宗教などにまつわる言葉が飛び交います。それだけで、とても難解な物語のように感じられて、逃げ出したくなる方も多いかもしれませんが、そんな心配は無用! 手ごわそうな言葉の嵐の中でも、全く道を見失うことなく、気が付くと、この<知的ゲームのような世界>に積極的に参加していることに嬉しい驚きさえ感じてしまう・・・、そんなスリリングでサスペンスフルなエンターテインメント作品なのです。  
 この度、英国での初演以来、絶賛を重ねてきた3人芝居の傑作が、客席200席ほどの小空間シアタートラムに登場します。脚本を緻密に徹底的に追求する手腕に定評のある 
演出:小川絵梨子の下、段田安則、宮沢りえ、浅野和之 の3人の卓越した演技者たちが、この白熱必至の台詞劇に挑みます。これまで、さまざまなタイプの舞台作品で、観る者を唸らせてきた3人の実力者たち。小劇場空間で、彼らの“極上の演技バトル“を目撃できるチャンスを逃すわけにはいきません! 時間を忘れるような最上のサスペンス・エンターテインメントにご期待ください!

1998年、英国ナショナルシアターにて初演。演出:マイケル・ブレイクモア、出演は、ボーア:デヴィッド・バーク、マルグレーテ:サラ・ケステルマン、ハイゼンベルク:マシュー・マーシュの顔ぶれで、300ステージ以上の上演を重ねる。その後、1999年2月には、ロイヤル・ナショナルからウエスト・エンドのダッチェス劇場にトランスファーされ、750ステージ以上の上演を記録した。2000年4月には、ブロードウェイに進出。演出:マイケル・ブレイクモア、ボーア:フィリップ・ボスコ、マルグレーテ:ブレア・ブラウン、ハイゼンベルク:マイケル・カンプスティの顔合わせで上演。同年のトニー賞最優秀作品賞、最優秀助演女優賞、最優秀演出家賞を獲得。2002年には、ハイゼンベルク:ダニエル・クレイグ、ボーア:スティーブン・レア、マルグレーテ:フランチェスカ・アニス 出演で、BBC制作のテレビ映画化が実現。米国ではPBSによって放映された。ただし、映画版は、かなりの脚色がなされ、演劇的な趣とは異なる作品となった。その後、世界各国で上演されているが、最近、最も大きな話題になったのは、2013年1月にBBCが制作・放送したラジオドラマである。ハイゼンベルクに、今をときめくベネディクト・カンバーバッチ、ボーアには英国演劇界が誇る名優サイモン・ラッセル・ビール、マルグレーテには、イタリア出身の人気映画女優グレタ・スカッキという豪華な顔ぶれで制作された。 このラジオドラマは、演劇ファンのみならず一般のファンの熱狂も巻き起こした特別なプログラムとなった。

日本での初演は、2001年10月―11月新国立劇場小劇場にて、翻訳:平川大作、演出:鵜山仁、出演:江守徹(ボーア)、新井純(マルグレーテ)、今井朋彦(ハイゼンベルク)の顔ぶれで上演。絶賛を浴び、2002年第9回読売演劇大賞の各賞で多くの優秀賞を獲得。美術を担当した島次郎が最優秀スタッフ賞に輝いた。待ち望まれた再演は、同じく新国立劇場小劇場にて、2007年3月に実現。初演から続投の新井純、今井朋彦に、ボーア役で村井国夫が参加。大きな評判を呼んだ公演となった。

ヴェルナー・カール・ハイゼンベルク (1901年‐1976年)
ドイツ(当時のバイエルン王国)ヴュルツブルク生まれ。1923年ミュンヘン大学で物理学の学位取得。翌年、本作のもう一人の主人公であるデンマークの物理学者ニールス・ボーアのもとへ留学。1925年に「行列力学」、1927年に「不確定性原理」を導き、量子力学の確立に貢献。1932年に若くしてノーベル物理学賞を受賞。1939年ナチス・ドイツ台頭時代は、多くの研究者が国を去る中、母国ドイツにとどまり、原爆開発チームに加わり、原子核理論の研究を継続した。ハイゼンベルクが原爆開発を推進していたのか、または意図的に遅らせようとしていたのかが、この戯曲のカギとなっている。

ニールス・ヘンリク・ダヴィッド・ボーア (1885年‐1962年)
デンマーク王国コペンハーゲン生まれ。「量子力学」という物理学の基本分野を設立した一人。1911年コペンハーゲン大学で学位取得後、英国留学。1913年に「ボーアの原子模型」を確立。1916年に母校の物理学教授就任後、1921年にニールス・ボーア研究所(理論物理学研究所)をコペンハーゲンに設立し所長に就任。世界中の物理学者の憧れの中心となり、「コペンハーゲン学派」を形成する。1922年、「原子論構造の研究」によりノーベル物理学賞受賞。量子力学に反対した相対性理論の確立者アインシュタインとの論争は有名。ナチス・ドイツの台頭時代、ユダヤ人を母にもつボーアは英国経由でアメリカへ。1939年発表の「原子核分裂の予想」は原子爆弾開発の根拠とされる。

マルグレーテ・ネアルン・ボーア (1890年‐1984年)
コペンハーゲン郊外の薬剤師の娘として誕生。フランス語教師を目指していたが、1910年にニールスと出会い婚約。1912年に結婚し、6人の息子を授かる。(ただし、一人は乳児のときに死亡。一人は19歳の時にボート事故で他界。)彼女は、公私ともに夫の仕事を支え、口述筆記や論文の下書きなども担当。アインシュタインをはじめとする多くの科学者たちとの面会の場にも常に同席したという。1975年には、4番目の息子オーゲ・ボーアが、父と同じくノーベル物理学賞を受賞している。

1933年、英国ロンドン郊外生まれ。2年間の兵役時代にロシア語を学び、その後、ケンブリッジ大学で哲学を専攻。卒業後、「マンチェスター・ガーディアン紙」、続いて、「オブザーバー紙」に記者、コラムニストとして勤務。その執筆活動のスタートを切る。この時代(1957-1968)に新聞コラムを集めたエッセイ集や、いくつかの小説を発刊。
最初の小説「The Tin Man〜ブリキ男」(1965)でサマセット・モーム戯曲賞を受賞。戯曲執筆の初期こそ酷評を受けたものの執筆継続の努力を続け、1975年発表の「Alphabetical Order」でイブニング・スタンダード賞「年間最優秀コメディ賞」を受賞。その後も幾度か多くの人気作を発表しているが、最も知られているのは、「Noises Off ノイゼズ・オフ」(1982)であろう。舞台裏からみた劇団公演のドタバタを描いたこのコメディは、彼に3度目のイブニング・スタンダード賞をもたらし、同作はウェスト・エンドで4年にも渡るロングランを記録した。
そして、1998年発表の本作「コペンハーゲン」、2003年に発表した東西ドイツの緊張関係を象徴する「ギョーム事件」を題材にした会話劇「デモクラシー」など、20世紀の歴史的事実を主軸としながらも独創的な舞台に仕上げた作品で、国内外で多くの反響を呼んだ。
また、マイケル・フレインは、ロシアの文豪チェーホフの翻訳家としても知られており、「桜の園」「三人姉妹」「ワーニャ伯父さん」「かもめ」の四大戯曲や一幕物の戯曲「煙草の害について」「スワン・ソング」「熊」など多数英訳している。


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