新編・吾輩は猫である
SIS company inc. のプロデュース作品のご紹介
《公演概要》
神経質で偏屈で一風変わった夫と、生まれつきノンキで大雑把な性格の妻・鏡子。
夫が神経を病んだときも、胃潰瘍で床に臥したときも、
その言葉や態度とは裏腹に、深い愛情で妻は夫を包み込む……。
それなのに、世間が妻に与えた風評は<稀代の悪妻>。

そう、夫の名は金之助、のちの文豪・夏目漱石。
相性がいいのか、はたまた悪いのか。夫婦とはいつの世も不思議なもの。
<小林聡美・高橋克実>で描く、ちょっと滑稽でちょっと変わった夫婦の愛情物語。
この夏、シアタートラムで上演決定!


「歴史上の人物の妻」という立場は、なかなか微妙です。
しかも夫が高名であればあるほど、悪妻の謗りを免れることができないのは、ソクラテスの妻以来、ほとんど型のようになっています。そう位置づけたがる人たちにとっては、「女は物事を現実的にしか捉えない ⇒ 現実的というのは俗だ ⇒ 俗物に形而上のことなんか理解できまい ⇒ だから女は男の考える事は理解せず、異ばかり唱えてヤカマシイのだ……」ということだったのでしょうか。

 近代の日本で、この<稀代の悪妻>の代表のように語られてきたのが、文豪・夏目漱石の妻・鏡子夫人でした。
この風説が根強いのは、日本人の誰もが必ず読む漱石作品『吾輩は猫である』や『文鳥』の中で、漱石が鏡子夫人を戯画化して描き、明治の人々が理想とした賢夫人とは程遠いという印象を、なんとなく読者が抱いたからなのかもしれません。
また、漱石門下に集まる弟子たちが、「あんな奥様では漱石先生がお気の毒」とあちこちで喧伝し、文章に書き残したのも、この風説を根付かせた原因だったのでしょう。
彼らにとっては、近代的な職業作家の地位をいち早く確立し、当時最も先鋭的な知識人と賞された"我が師"を神格化するためには、言いたい放題の物言いをする鏡子夫人では役不足だったのです。

しかし、いくら間近にいても、所詮、弟子たちは"あかの他人"。夫婦の機微がわかるはずはありません。
しかも、漱石没後、鏡子夫人が書き残した「漱石の思ひ出」という著作を読んでみると、漱石という文豪も、一般の家庭人としてみたときに、いかに扱いかねる存在だったかということが見えてもきます。
だって、結婚したばかりの新妻を置いたまま英国留学したものの、近代の風に当たり過ぎたためか神経衰弱を患って帰国。教師を辞して、エリート知識人になったはずが、印税制度もまだ整わない時代の小説家の稼ぎは知れたもので、多くの弟子たちをかかえて貧乏所帯の切り盛りをするのは妻の役目。夫ときたら、お金にもならない俳句雑誌に投稿したり、子供の描くような絵を描いたり、下手な謡を唸ったりばかりで、妻としては、どこがそんなに
偉いのかわからない………、鏡子夫人がそんな愚痴をもらしたくなるのはもっとも、と頷きたくもなるものです。

でも、そんな鏡子夫人の言い分と、漱石が自身の作品の中で戯画化した鏡子夫人像に触れる度、そこには、癇に障りながらも、放ってはおけない、愛すべき細君の姿が浮かび上がり、心の奥底が温かくなるような感覚を覚えてしまいます。

劇作家・宮本 研 が、<きっと夫婦にしかわからない深い結びつきがあったはず、、、、、、>と、そういう視点から、1982年に文学座のために書き下ろしたのが、本作品『新編・吾輩は猫である』でした。
宮本研は、『美しきものの伝説』で大正デモクラシー期の実在人物をモチーフに、現代人の心をも揺さぶる青春群像劇を作り上げましたが、本作品でも、漱石と鏡子夫人の夫婦の姿をタテ糸に、漱石作品『吾輩は猫である』にある庶民のエピソードや、漱石の深層心理を描いた『夢十夜』をヨコ糸に織り込み、また、近代的自我の目覚めの中で苦悩する明治の知識人(二葉亭四迷や森鴎外ら)も絡めながら、血の通った人間たちのドラマを展開させています。

今回、夏目漱石・鏡子夫妻を演じるのは、その独特の存在感と演技力が光る小林 聡美、そして、舞台・映画・テレビで多面的な魅力を見せる 高橋 克実 の二人。
加えて、高橋 一生、梅沢 昌代、坂田 聡、山崎 一、綾田 俊樹 という実力派キャストが、夏目家に集う人々〜明治の知識人、市井の人々、主人思いの女中、また傍観者たる猫 に至るまで〜 を演じ、この愛すべき物語を牽引していきます。

 
演出には、蜷川幸雄氏の演出助手として、蜷川氏の数々の演出作を支えてきた井上 尊晶 を迎えます。
蜷川氏の下で、大劇場から小劇場まであらゆる劇場を知り尽くした井上氏は、自身の演出作「カスパー」、「障子の国のティンカーベル」などで、ベニサン・ピットで斬新な劇空間を作り、高い評価を受けました。今回も、シアタートラムという濃密な空間と機構を最大限に活かし、どんな手法で、このドラマを掘り起こして行くのか、期待が高まります。

 私どもシス・カンパニーはこの1年、『美しきものの伝説』、『ダム・ウェイター』、『ママがわたしに言ったこと』、そして、大人計画・松尾スズキ&大竹しのぶ との衝撃のコラボレーション『蛇よ!』など、多くの話題作を上演して参りました。

この夏、私どもが自信をもってお届けする、ちょっと滑稽でちょっと愛らしい夫婦の物語『新編・吾輩は猫である』も、いつの時代にも変わらない人間の温かさ・夫婦の不思議な機微を描いた必見の舞台であることは、間違いありません。是非、ご期待ください!

[ お問い合わせ ]
シス・カンパニー (03)5423-5906
番号はお確かめの上、お間違えないようおかけください。


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